ジャンル|グラフィック

闇に用いる力学 特装版

竹本健治 (光文社)

97年の刊行時、カルト的人気を博した『闇に用いる力学 赤気篇』。全面加筆修正された「赤気篇」と、刊行が待ち望まれていた続編「黄禍篇」「青嵐篇」との3冊同時発売を記念して、作品の世界観を表現した函入り特装版の刊行が決定。

特装版の肝となる函は「闇」に見立て、暗箱のような閉じられた世界を設定。決して対ではないという光との関係性を明示するため、闇を切り裂いて侵入する光を可視化するような深い切り込みを。ここから見える背表紙とカバーの一部は楔状。
書籍本体は、タイトルが示す赤・黄・青の色面をベースに、「力学」を暗示するベルト状のエレメントで全体を拘束。三体問題、雨、光線、道路(都市)などのキーワードからの連想でもあります。
この意匠を延長して匣にも刷り込むことで、「闇」との一体感を補強しました。
実は、全体を覆うベルトの角度は全て異なっています。これは、三体問題の「万有引力によって相互作用する質点が三つ以上の場合は、今後の軌道を正確に予想できない」ことをイメージ的に演出したもの。
匣と本は物理的なレベルでは対等な位置づけにすべく、本を収めない時には匣は自立できない上下二分割構造としました。匣であると同時に、あくまでブックフォルダ、という意図です。
この構造を実現するために、制作を担当いただいた大一さんには試行錯誤を繰り返していただきました。実は、見えないような細部にまでさまざまな工夫が凝らされているのです。
小冊子のレイアウトも担当。

●note
闇に用いる力学 特装版