ジャンル|ミステリー・サスペンス・タイポグラフィ

鵼の碑

京極夏彦 (講談社)

帯イラストは石黒亜矢子さん。

何が起きているのか。或いは、起きていないのか。
父を殺した記憶を蘇らせた女、父の死の謎を追う男、消えた三つの死体──。
謎に導かれるように人々は日光に集い、鵼のようなキメラが形作られていく……。

本を「光る碑」のような物体にすることを目指して、デザインプランの検討をスタート。カバーはタイポグラフィをメインとしたデザインとすることを決め、資材選びに着手。
「カバーの碑感×本表紙の不思議な光る物体感」を意識し、カバーには黒のミランダ(細かなガラスフレークの入った用紙)、本表紙にはタントI-60(発色が鮮やかな蛍光色の用紙)をセレクト。
タイトルは表1から背にかけて、帯にも貫通する形で大きく堂々と配置。あえて65ミリという脅威の背幅を生かす形のデザインとしています。
グラデーションにもこだわり、インクの種類や色数を変えて何度か校正を取った末に、銀×スミの2色刷案が採用に。碑感が最も強く出て、かつタイトルも目立つ、というのが採用の理由です。
帯には石黒さん画の鵼の姿を入れ、「百鬼夜行シリーズの新刊」であることをアピール。絵はアンダーに調整し、資材にテクスチャーのはっきりした岩はだを採用することで、古い掛け軸のような見え方を目指しました。

「百鬼夜行シリーズ愛蔵版」との差別化を図りつつ、実際に読める造本を目指して、本文用紙の紙厚をどうするかをご相談。製本の限界にチャレンジしていただいています。
本文全ページにぼんやりとした黒枠をつけることで、天地と小口をグレーにし、より「碑」感を補強する仕掛けを施しています。擬似三方黒です。
冒頭の作中作の地の色は、物語本編の始まりに近くにつれだんだん明るくなるような仕掛けを。