あたしは、世界の本当の姿を知りたい。
1936年、旧弊な日本を抜け出し、仏印ハノイで地理学を学ぶことになった鞠。三人の男との出会いが、彼女に植民地や戦争の非情な現実を突きつける。運命に翻弄されながらも強くあろうとする鞠の人生の行き着く先は──。
第13回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。
タイトルにある睡蓮と作品に登場するインドシナ大学の写真をコラージュ。泥のような世においても強く可憐に咲く睡蓮の花に、主人公のイメージや作品の主題を仮託しています。作中では戦時下の様子も描かれていますが、歴史の硬質さはあえて装幀から排除しました。